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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第13章 月の剣
【1】

 その朝の進貢は、神依にしては珍しく早い一陣に紛れることができた。
「欲を申せば、毎朝このくらいに参れるとよろしいのですが」
「無理、寒いし眠いもん……。禊は平気なの?」
「私は元々あの程度しか眠りません」
「嘘でしょ……絶対体に良くないよ……」
 結局あの後、数時間しか眠れなかった神依は目を擦りあくびを噛み殺しながら花と稲穂を摘んだ。花藻を摘むに、早朝の川の水は氷のように冷たい。
 一方、稲穂は斎水別神の棲む池の回りに実っていた。
(これは日嗣様の力だったんだね……)
御霊祭の思い出が甦る。けれどもその稲穂は、禊に託して。
 それが他の巫覡(ふげき)の目にどう映ったかは分からない。それでも神依は、もううつむかなかった。
 人の目よりは、互いに心を開かしてたった数時間の間(ま)しか得られなかったことの方が気恥ずかしいかもしれない。けれどそれも、ある意味では新しい生活に相応しいものの気もした。
 そうして進貢を終えた二人は、朝餉の準備を始めているもう一人の家族の元へと戻る。
 まだ太陽の姿こそ見えねど、辺りは白々としていた。これから広場に向かう多くの巫女達と入れ違いに通りすがり、形ばかりの挨拶を交わしてはたまに無視されて。
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