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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第12章 天津水
 振り向きかけた神依を制し、禊は乱れたその髪を再び胸の方に流してやる。濡らしてしまって、風邪をひかせるのも避けたい。
 新しく寝着を着せ、新調したばかりの綿の入った打ち掛けを肩に掛ければ主はにこりと笑った。
「あったかい。綿ってすごいね」
「どうぞ、お部屋の方へ。そのうち一ノ弟も参りましょう」
「三人の方がいい?」
「今は……貴女にも私にも、その方がよろしいかと」
「ん……そっか。そうだね、ちょっと情けないけど」
そうして禊は雨戸や窓掛けなどいつもより遅い戸締まりをし、神依はそれにぶらぶらと付き添いながら自室へ向かう。
 外は霧のような雨が降っていた。しかしその向こうでは月が傾き、何故か見張られているような気がする。
 「見て。雨が降ってるのに、月も出てる」
「雨月夜ですね」
「なんか……ちょっと怖いね」
ぼんやりと滲む月。
 じっとそれを眺めていれば、厨(くりや)の方から童が盆を持ってやって来た。冷たいものを頼んだはずなのに空気がふわりと温かい。湯呑みも三つある辺り、本当に──賢く、ちゃっかりとしている。
「冷たいのって言ったのに」
「ダメ、一ノ兄は頭固くしないように溶かさないとだし、姉ちゃんは単純に体冷やすの良くないからこっち」
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