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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 そもそも日嗣がそれを知る術はない。神依に問うたところで知るはずもなく、逆に余計に意識を「あちら側」に持っていってしまいそうで、怖かった。
 そうして突破の糸口さえ見付けられず完全に身動きの取れなくなってしまった日嗣に、その目の前に、最も奥まっていた一本の蛇の頭がゆっくりとにじりよって、その長い舌をぐるうりと絡めた。

 ──もう気は済んだか。これ以上、悪さを致すな幼き神。我が血を宿す、小さき神。

シュウシュウと威嚇とは異なる空気が喉から抜けて、日嗣の頬を生ぬるい空気が包む。亡者のようにへこんだ眼球が真横に来て、その中に宿る赤い火がゆらゆらと誘うように揺れる。

 ──こちらにおいで、近う寄れ。怖くはないぞ、痛くはないぞ。お前がその身を差し出すならば、先の無礼も赦してやろう。お前が勝ちたるようにも見せて、その血と魂(たま)を私に還し、お前の肉であの妻巫女とまぐわおう。愛(いと)し恋しとお前の声で吐いてやる。一人占めで書いた名も、ミ依りミ依りとそれをそのまま紡いでやるぞ。そしてお前の指で頬を撫で、お前の爪で肌をかき、お前の舌で花の間(あわい)を暴くのだ。そしてお前のこの唇で、芯と蜜とをつと啜り、お前の腹の雄蛇を、擦らせ潜らせ籠らせよう。末に孕むは嬉しかろう、嬉しかろう……。
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