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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 (──わからない)
誰が何を言っているのか、神依には本当に判らなかった。一人だけ母を名乗る女がいたような気がしたが、自分に母などいたのだろうか。
 いや、いたはずだ。いつまで経っても成長しない自分を、葦の舟に乗せて流した顔も知らない母。大好きだった水色の、ちょっと良い傘を買ってくれた母。
 大好きだった? けれど自分は童に、どんな色も好きだと言わなかったか。あれは嘘だったのだろうか?
 (違う──)
いろんなものが頭の中に流れ込んできて、あの廃墟の街で得た心地悪さが神依を襲う。こんなにもたくさんのものに溢れているのに、空虚な心地。
 外ではまるで何かをこそぎ取られるかのように蛭達に肌を舐められ、身芯まで溶かされる心地がした。
 呑まれる、と思った。そのまま自分が消えて無くなると思った。
「──」
しかし次の瞬間、空気を裂くような叫び声が耳に届いて目を開けば、男神に首を掴まれ、そのまま泥の蛭の中に叩き付けられた子龍の姿が飛び込んできた。
 「──キィッ……キュイィッ」
「あ──ああっ!!」
蛭は自分に襲いかかる時とは異なり、子龍の細い体に吸い付き牙を立て、清水のように綺麗な流れを作っていた尾をむしっていく。
 痛みにのたうち、それでも子龍は今まで神依が見たことがないくらいに険しい形相と声で蛭を威嚇し、男神に喰ってかかっていた。
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