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《愛撫の先に…②》
第8章 わだかまり…
つかつかと側に来る陽子に奈々美は一歩後ろに下がった。

『制服に着替えたら、ロッカーに忘れたままのスカーフで悪いけど首に巻いたら?』
自分のロッカーを開けたたまれた白のそれを差し出した。

『…虫刺され…だめ?洗濯して返すね』
優しさに目元が潤む、受け取る。

同じ企画部へと入ってく陽子を見て急いで上着・ボーダー柄の薄手のカットソー・黒のパンツを脱ぎ制服に着替え白いスカーフを丁寧に首に巻いてゆるく結んだ。

ありがとう、陽子…
結城さんの優しさ、陽子の優しさが身に染みる…

陽子の機転で仕事開始に間に合ったが眠そうな奈々美はやはり集中力に欠けていてミスをし課長に怒られてしまう。
だがそんな彼女の様子だからと残業は免れた。

昼休み、ランチに誘う陽子と廊下で話をしていた時後ろからケラケラ笑う声が聞こえ奈々美は振り向きすぐに前を向く、相沢と高瀬がこちらを指指していたからだ。

『あら〜風邪?うつさないでね、っていうかうなじんとこカットバン見えててさ怪我〜?笑えるぅ』
ウケる〜とばかりに高瀬の腕をバシバシ叩きながら笑い過ぎの涙目の相沢。

『ダサ…カットバンって、周りに元彼女だとか言いふらすなよ、俺がイメージダウンになるし〜』
肩までのサラサラの黒髪が笑いこける度に左右に揺れる。

言わない…
何であなたの事を好きだったのか自分で自分を殴りたい…
こんな人だったなんて…
資料室のドアが閉まり高瀬さんに助けられあたしはそれであなたを好きになった…
だけど今は好きじゃないっ!
どうしてこんな人を…
だめ、人を悪く思っちゃ、一度は助けてくれた人じゃない…

『奈々美は季節はずれの蚊に刺されたらしいのよ、蚊って容赦ないから〜、相沢も高瀬も蚊に刺された事あるでしょ、さっ奈々美ランチ行こ』
陽子は奈々美の腕を取りスタスタと歩きロビーへと急いだ。

『陽子、陽子………ありがとう』
彼女は声に詰まりながらもお礼を言う。

『あんな奴ガツ〜ンと言ってやればいいのよ、奈々美なんにも言わないから言われんのよ』
ヤレヤレ世話がやけると言わんばかりに両手をヒラヒラさせる陽子は困った顔をした後に笑う。

ランチはパスタ。
その店に行く時にたまごホリックの前を通り過ぎた為に奈々美は一瞬立ち止まりレイプの張本人がいないかと店を覗き込む。

『奈々美〜?何してんの?その店にするの?』
陽子が振り返り聞く。
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