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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

***
「おい、カバ。せっかく名取川文乃が……」
「女は臨機応変に化ける生き物です。ね、沙紀さん」
「そうそう」
「しかしよ、なぁ朱羽……」
「仕方がないです。美幸さんの処遇は陽菜に一任されているんだし、陽菜のやりたいようにさせましょう」
朱羽経由で沙紀さんに頼んでゲットしたメイド服に白いレースのカッチューシャに靴下に靴。
沙紀さんの主な仕事は、そうした使用人の備品管理であったらしく、比較的簡単に予備の新しい服一式を持ってきてくれた。
ここのメイドはベテランになると裾丈が長く、新人は膝丈らしい。ベテランの区分けは年齢らしいが、28歳は本当は裾が長いもののようで、そこを沙紀さんが短いのを持ってきた。
――だって、28歳はおばさんだから老いて醜い足を隠せと言われているみたいじゃない? 陽菜ちゃんは若いし足が細くて綺麗だから、私の代わりに28歳でもイケることを見せつけちゃってきてよ!
いやいや、沙紀さんが着た方が年齢より若く見えるから。
最初朱羽は小姑の如く、短いからと駄目出ししたのだけれど。
――お前、この屋敷にいるのは俺とお前と当主と、外で寝起きしているあの使用人達だぞ? あの80近いジジイがカバに勃つと思うか?
朱羽はちょっと考え込み、専務をじっと見た。
そう、何か言いたげに専務を見つめて。
――俺は、沙紀がいるだろうが! 俺だってお前みたいに、夜這いされても勃たねぇよ!
あたしと沙紀さんは顔を見合わせて言った。
――なんの話!?
どうやらメイド達は、次期当主夫人の座を巡り、美幸夫人を目指して熾烈な戦いを繰り広げたらしい。
なにせイケメンの、次期当主有力候補。
我先へと、彼らが鍵をかけた部屋に、勝手に合い鍵を使って忍び込んで、数人は鉢合わせしたらしい修羅場。しかしそこでタッグを組み、彼らを押さえ込んで既成事実を作ろうとしたんだとか。
どんなに突き飛ばそうにもゾンビの如く、再度彼らに襲いかかってきたらしい。
……凄いよ、「戦慄 愛欲の亡者が棲まうの館」とか名前をつけたい。

