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第45章 夢の翌日

なんの前触れもなく。
甘い囁きも。
優しく抱き寄せる腕も。
瞳を閉じる瞬間の、どきどきも。
そのどれをも必要としなかった。
いつものように彼女の両手が、自分に絡んできたかと思えば。
睫を伏せる間も与えられず。
掠めるような、接吻。
もっと長い間していたような気になっていたけれど。
実際は、きっと、一秒あるかないかの短い時間で。
ようやく思考が働き始めれば、もう彼女の唇は離れていった。
余韻に浸る間もなかった。
送ってくれてありがとう－言い残し。
それきり、彼女は自分を顧みる事もなく。
颯爽と自宅の中に、消えてしまったから。