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蕩けるようなキスをして
第42章 もう一秒
離れるどころか、更に身体を寄せて、華夜子は彼を詰(なじ)る。
自分の非を棚に上げ、彼を責める如く。
散々悩んだ末に。
陸は彼女に触れなかった。
彼女の背中に手を回し-その指先が正に触れる、瞬間。
電流に打たれたかのように、その手を、引っ込めた。
今は、華夜子がただ一方的に、陸に抱き付いているだけの状態だった。
「…困らせんなよ」
陸が漏らした低いそれに、華夜子は泣きたくなる。
「困る?陸は…困ってるの?」
「滅茶苦茶困ってるに決まってんだろ。そんな誘うような事を言われて。こんな場所で、こんな事されて。…俺がどれだけ困るか、華夜は分かってくれてる…そう、思っていたけれど?」
一秒だけでいい-願わなければ良かった。
自分が口にしてしまったから、いいよと、意思を示してくれたのに。
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