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蕩けるようなキスをして
第42章 もう一秒
華夜子は進退窮まって、ともすれば、泣きたくなってしまう。
そんな彼女の微かな変化にいち早く気付いた陸は、意地の悪かった自分を心の中で即座に認めた。
訊くまでもなかったのに。
馬鹿みたいに、問い質してしまった。
嬉しい気持ち、そのままで良かったのに。
素直に、嬉しがっていれば良かったのに。
『どきどきが止まらなくなる』-そのままの意味なのに。
どきどきが止まらないのは、自分も同じだ。
どきどきしてるのは、自分も同じだ。
彼女と同じ高鳴りを今、自分も感じてる。
同じ想いを今、ふたり、確かに共有している-…。
陸は前髪を手で激しく乱し、込み上げる感情を堪える為に、唇をきつく、噛み締める。
自分自身の胸中を、どうにか落ち着かせた後(のち)。
陸は、彼女を呼んだ。
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