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蕩けるようなキスをして
第6章 好きな女
幹を背に、立たせられる。
やがて、その人物を認めた華夜子は、深い深い溜め息を吐(つ)いた。
うんざりした顔が気に食わなかったのか、彼がその整った眉を必要以上に顰(しか)めた。
一昨日は教室の扉に。
今朝は桜の太い幹に。
彼女の顔の両側に手を付き、
「…朝一から会えて、こっちはすげー嬉しがってるのにさあ」
陸は不満げに、ぼやく。
「…だって私は嬉しくない」
「華夜子って顔はすげー可愛いのに、なんで性格はいまいち可愛くないんだろ」
失礼な事を呟かれ、華夜子は、いらっとくる。
「余計なお世話!この手も邪魔だから、早く避(よ)けてよ」
一昨日に引き続き、今日も朝早くから、壁(じゃないけど)ドンは勘弁して欲しい。
こんなとこ、また誰かに見られでもしたら-。
しかし、この彼が黙って引き下がる訳もなく。
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