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蕩けるようなキスをして
第6章 好きな女
大学までの通学途中、胃を痛めながら、電車に揺られてきた。
電車の中で、誰かに声を掛けられたりしないよね、とか。
電車の中で、ひそひそ話し合う学生グループを発見する度、自分の事を何か言われてる?とか冷や冷やしながら、来た。
でも少なくとも、途中まではそんな事は一切なかった。
なんだ、案外なんでもない?
なんだ、全然平気じゃん?
自惚れ過ぎだった自分が恥ずかしくなる。
彼は常に注目の的だけど、昨日ちょっと一緒にいただけの女の事なんて、誰も気にも留めてない。
よくよく考えてみれば、自分だってそうだった。
今まで何回か大学の中で彼の姿を見かけた時、その横にいる女子学生の顔なんか、いつもきちんと見た事なんかなかった。
ただ、ああ、またこの間と違う相手っぽいなと、思うぐらいで。
まあ、元から、彼の事なんてさっぱり興味がなかったから、ましてやその彼女の事なんかどうでも良かった-それが大きかったのかもしれない。
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