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蕩けるようなキスをして
第5章 卵焼き
深呼吸を、一回。
華夜子は覚悟を決め、箸で卵焼きを挟んだ。
彼を見る。
最高に楽しそうな顔で、彼女を待ってる。
「ちょーだい、華夜子」
笑う陸の口へ、華夜子は震える手で、静かに箸を進めた。
そして。
彼が完全にそれを口に入れ、咀嚼を始めたのを確認し、華夜子は彼から箸を離した。
まるで、大きな仕事をやり遂げた後(あと)のような、達成感。
ただでさえ暑いのに、それとはまた別の汗が吹き出す。
額を手の甲で、拭う。
極度の疲労を感じ、もういい加減建物の中に入ろうと、弁当箱やら箸を片付けてると、陸のそれが届いた。
「すげー美味い」
鞄から顔を上げれば、穏やかで、優しい-そんな表情の陸が微笑んでいる。
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