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蕩けるようなキスをして
第35章 彼女の過去
華夜子の片頬には、一筋の涙が伝っていた。
彼女の涙を見たのは、これが最初じゃない。
だけど、初めてじゃない事が、慌てふためかない理由にはならない。
陸は激しく動揺してしまい、頭の中は真っ白に、どう対処していいのか全く分からない。
以前彼自身が喋っていたように。
こう見えても、女性を泣かした事などこれまでの人生で殆どなかった-言うなら、彼女を一度、大学の中で哀しませてしまったぐらいだ。
あの時の事は、後悔してもしきれない。
あんな事は、二度としない-誓っていた。
だから。
余計に。
こんな時はどうしたらいいのか。
予想外の出来事に、情けない事に、まるで頭は働かない。
ともすれば本当に、一緒になって泣きたいぐらいの心境になってくる。
目の前の彼女が何故泣いているのか-理由を散々逡巡させる。
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