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蕩けるようなキスをして
第34章 彼の過去
「なんか、櫻葉陸、変わったよね」
ひとり憂いていた彼の耳に、乃愛の声が響く。
陸は不審そうな眼差しを、乃愛に向ける。
何を言われているのか、心当たりがなかった。
「誰の事も好きにならなかったのに。そんな台詞なんか、絶対吐くような人じゃないって思っていたのに-」
「そんな?」
眉を寄せ、陸は先を促す。
「彼女に首ったけだって。そんなストレートに、そんな恥ずかしげもなく言われたら、冷やかす事も出来ないじゃん?逆に訊いたこっちが赤面って言うか?」
乃愛は長い前髪を掻き上げ、苦笑いした。
瞬間。
陸の整った横顔に、赤みが差す。
「…仕方ねーだろ」
絞り出すように、呟く。
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