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蕩けるようなキスをして
第33章 抱擁
「わざとじゃない。話そうとしたら、ちょっと当たってしまっただけで」
-唇が。
しれっと、陸は言い切ってみせる。
「ぜったい、嘘!絶対、故意にやってたっ。それに唇なんかじゃなかったしっ?」
自らの腕を擦り抜けようとする華夜子の身体を、なんとか拘束したまま、陸は訊く。
「なら、どこがどうだったの、華夜?」
突如として真面目な声音で問われ、華夜子は瞬間、怯んでしまう。
「えっ…どこが、って…」
後が続かない。
華夜子の暴れていた力が一瞬緩んだ隙に、陸は彼女に自分の顔を思い切り寄せた。
鼻先が、もう少しで触れてしまい兼ねない、至近距離まで。
驚愕-まさにその表現が相応しい表情で、華夜子は目を大きく見開く。
思わず呼吸も止まる。
何をされるのか-明らかに酷く動揺してる華夜子とは正反対に、陸は余裕の笑みで彼女に向き合う。
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