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蕩けるようなキスをして
第32章 予約済み
あの甘く、溶けてしまいそうな笑みを、向けられたら、もう。
もう、だめ。
もう、どうなっても良くなってしまう-…。
結局。
彼を真面に見る事など出来ないまま、席を立つ。
それを合図に、陸も彼女に合わせ、腰を上げる。
並んで、図書館の外へ。
秋晴れの下。
ふたりの長い影が、寄り添う。
歩く度、僅かに触れては離れを繰り返す、ふたつの黒い影。
やがてひとつの影から伸びた手が、もうひとつの手に重なる。
また、離れてしまう-思ったけれど。
もう、離れる事はなかった。
握り返された手の温もりに、陸は安堵し、密やかに笑みを零す。
いつもそうするように絡まる、ふたりの、指と指。
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