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蕩けるようなキスをして
第29章 嫉妬
躊躇いの後(のち)。
やがて紡がれる、陸の静かな一言。
「…ナンパ?」
瞬時に。
華夜子の全身の毛が逆立ち。
脳が、沸騰した。
涙なんか、絶対、見られたくない。
「…帰る」
震える唇で。
消え入りそうな声音で。
そう告げるのが、やっと、だった。
彼の隣りをすり抜け、たった数分前に到着したばかりだと言うのに、再び駅に向かって歩き出す。
「華夜?」
陸の慌てた声が彼女の耳を掠めたが、もう一秒たりともここに留まっていたくなどなかった。