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蕩けるようなキスをして
第25章 デート
どんな女だって、一瞬で虜にしてしまう、その微笑。
それが今、自分だけに向けられている。
自分だけを見詰める、茶色の双眸。
自分だけに囁く、唇。
テーブルを挟み、手を伸ばせばすぐ届く距離にいる、彼。
生まれついての華やかさを持ち。
周りの人間を惹き付けて離さない引力を持つ。
ものの見事に捕らわれ、今、こうしている、自分。
ほんの数時間前までは、まさか向かい合って、食事をしているなんて。
微かな笑みを口元に。
こちらを穏やかに見られ。
急激に、恥ずかしさが襲ってくる。
華夜子は大急ぎで目を外し、皿の上の卵をフォークでひと掬いし、高速で口に運ぶ。
味なんて、よく分からなくなってくる-折角美味しい物を食べてるのに。
勿体ない事してる-思うけど。
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