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第72章 最愛

完璧な彼の次に。
完璧じゃない自分を。
完璧じゃなくてもいい。
そう思ってくれたのはいつから？
ゆったりとした腰の動きによる、優しい快感に身を任せながら、華夜子は口を開（あ）いた。
「…中庭で淋しそうだったから」
ひとこと呟かれ。
予想していたどの答えにも当て嵌らないそれに、陸は小さく息を呑み、華夜子をじっと見詰めた。
「ひとりで…なんだかやるせない目をしてたから。辛そうな、哀しそうな、つまらなそうな、泣き出しそうな…でも、そのどれとも違うような。最初は自分の見間違いだと思った。こんなに華やかで、いつでも注目の的で、誰からも好かれているようなひとがまさかって。…でもやっぱり、次に会った時もどこか遠い目をしていて。…どうしてこんな表情（かお）するのって、気になりだしたのが最初だったと思う」
言い終わり。
華夜子は陸を正面から見据えた。