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第72章 最愛

「私。陸に出逢えて良かった。毎日楽しくて。毎日嬉しくて」
－毎日、幸せで。
華夜子の漏らしたそれに、陸の魂は激しく揺さぶられる。
「他の誰でもだめなの。陸じゃなきゃだめだったの」
潤んだ双眸で真っ直ぐに見据えられる。
「私を救ってくれてありがとう。私を選んでくれてありがとう。陸」
微笑んだ華夜子の瞳から、ひと粒。
涙が零れた。
もう、平然となんかしていられなかった。
陸はまなじりに滲んだものを隠すように、華夜子を掻き抱いた。
ありがとう－なんて。
そんなの、自分がいつも思ってる。
そんなの、自分がいつも思ってた。
幸せにしてもらっているのは－間違いなく自分の方だった。
感謝しても足りないのは－絶対に自分だった。