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蕩けるようなキスをして
第71章 証
扉を開ければ-いつもと病室の様子が違っていた。
その異様な空気に、私は思わず後ずさる。
ベッドに横たわる先生は眠っているのか双眸を閉じ、少しも動く事はなかった。
先生は点滴に繋がれ。
自発的に呼吸が出来ないのか、酸素を送られていた。
入り口で佇むしかない私に気付いた看護師のひとりに、部屋から出ているように背中を押される。
昨日の夕方は、まだ話も出来ていた。
力があまり入らないようになった先生の代わりに、私が強く先生を抱き締めて。
少し冷たい先生の唇に、私の温かな唇を重ねて。
そしてふたりで笑って、またねをした。
嘘でしょ。
嘘でしょ、先生。
今日がなんの日か。
今日は私の誕生日だよ。
今日は私が二十歳(はたち)になった日。
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