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蕩けるようなキスをして
第66章 秘密
『違っていたのなら、ごめんね。…なんか、その、いつもと違って見えたから。体調でも悪いんじゃないかって。それでもしかしたら、授業もあまり頭に入らなかったのかもしれない。…そう勝手に思って、参考書があれば復習の手助けになるかなって』
-ほんと、違ったらごめんね。
先生に弱々しく双眸を細められ-私は無意識の内に、数歩後ずさる。
その右足のかかと部分に、何かが当たった。
『あ…!』
短く叫んだ時は既に遅く。
高く積もった本達はバランスを失い、音を立てて床に崩れていった。
慌てた私もまた安定を保てず、背後に倒れそうになるところで、腕を掴まれた。
間一髪。
派手に転んで、怪我をせずに済んだ-安堵の息を漏らしたところで、気付く。
自分が今、どういう状況に置かれているのかを。
助けてもらったお礼を言って、すぐに離れなきゃ-思うのに。
驚きに震える身体は、ちっとも言う事を聞いてくれない。
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