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蕩けるようなキスをして
第61章 恋と憧れ
しかし。
怒りはなかった。
寧ろ、留以の言ってる事はやっぱり正しいかも-そう、思っていた。
「だって高階先生、四十近くなかった?そりゃ、見た目はもうちょっと若く見えるけどさ。所詮私らからしたら、おじさんだよ?…また失礼な事言うけどさ、取り立ててかっこいい訳でもないし…好きになるってどこを?話をした事も殆どなくて、ただ講義で毎週顔見るだけで、どこを好きになったの?好きになる程、高階先生の事、華夜子知ってるの?」
留以の言う事は、いちいちもっともだった。
ひとを好きになるには、それなりの理由や切っ掛けがある。
毎週授業を受ける、大勢の学生の中のひとりに過ぎず。
ボールペンが転がらなければ、話す事は勿論、名前を知ってもらう事もなかった。
それにしたって、例え次にもう一度話す機会があったとして、覚えてくれているかどうか。
その程度の関係で、一体どこを?
一体、何を?
問われれば、自分自身の事なのに-答えられない。
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