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第59章 蕩ける夜

そんな事、知ってるのに。
傷付けたくないのに。
泣かせたくないのに。
それでも、したいなんて。
その矛盾に、自分でも嗤ってしまうけれど。
でも。
これだけは言える。
自分の欲の為だけじゃない。
それだけは、嘘偽りなかった。
「どうしても無理だと思ったら教えて。その時はちゃんと止める。けど－」
陸は華夜子の頭を撫でながら、告げた。
「爪を立ててもらってもいい。噛んでくれてもいい。それで痛みが少しでも和らぐなら。…だから、出来るなら耐えて欲しい」
非情な事を言っているのは、百も承知。
「…私、そんなに凶暴じゃないよ」
陸の必死の呟きに、華夜子は思わず、笑いを漏らしてしまった。