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第59章 蕩ける夜

陸の顔が歪む。
自分の欲を最優先して、彼女の事を全然思いやっていなかった事実に。
それなのに、彼女を愛してるなんて。
それなのに、彼女を愛したいだなんて。
自分自身の醜さに、辟易してしまう。
彼女の素肌に触れている自分の指が、とてつもなく汚れているような気がしてならなくなってくる。
こんな欲に塗（まみ）れたもので、彼女までもを穢（けが）そうだなんて。
明らかに自分を激しく責めたてている陸に、華夜子も心が痛んでくる。
こんな事なら、もっと早くに伝えていれば良かった。
本気で言う気なら言えた。
でも。
思ってしまった。
そんな事、絶対彼はしないと思ったけれど－煙たがれないかと。