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蕩けるようなキスをして
第58章 真相
「陸がいなきゃ、私はまだ完全に立ち直っていなかったと思う。哀しみがなくなって、今こうしているのはいけない事?哀しい時期が短くなったのは、悪い事?…陸は、私がまだ泣いていた方が良かった?」
おずおずと華夜子が訊いてきて、陸は絞り出すように答える。
「…そんな訳、ねーだろ」
そんな訳はないけれど。
今が楽しいと。
今、笑っていられるのが、自分のお蔭だと言ってくれるのなら。
それに勝る喜びはないけれど。
「焦ってもない。強要された訳でもない。頑張った訳でもない。…陸とたわいもない話をする度に。手を繋ぐ度に。ふたりで出掛ける度に。楽しい思い出がひとつ増える毎に、哀しみがひとつずつ、塗り潰されていった。…気付けば私の心は、楽しい思い出でいっぱいで。哀しみが入り込む隙間なんかなくなった。極、自然に。知らない内に。元気になれた。…ほんとだよ?」
「…」
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