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第57章 クリスマス・イヴ

「胸キュンしたろ？」
「…ち、ちょっとだけね？いきなりだったから、どっちかと言うとびっくりしちゃって」
「素直に言えばいーじゃん。キュンキュンし過ぎてやばい。どーしよ、陸って」
「もー、うるさい！だから、ほんの一瞬キュンしただけだってば。やばいくらいキュンキュンなんかはしてないっ」
赤く熟した両頬で、華夜子は陸に食って掛かる。
陸は大袈裟に、がっかりしたような溜め息を吐（つ）く。
「華夜はそーいうとこが、いまいち可愛くないんだよなあ。そこでひとこと、キュンとしたって言ってくれれば、俺も最高にテンション上がるんだけどなあ」
－まあ、いいけどさ。
言って、陸はポケットの中の華夜子の手を握り直した。
歩を進める為、再び横を向いた陸の顔を盗み見し、華夜子は悩む。
言おうか言うまいか何度も迷った末に、思い切って声にする。
「…死にそう」
「…なに？」