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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
でも。
恥なら、もう散々。
今更、彼女に対して、これ以上恥ずかしい事なんて。
「…俺は。彼女…まあ、これは俺の中だけでの勝手な思い込みなんだけど。俺の中では変わらず大切な彼女だけど。彼女の中では、もうとっくに俺は、彼氏でもなんでもないかもしれないけれど。…とにかく俺は、彼女に謝りたくて。凄く泣かせて、凄く傷付けた事を、どうしても謝りたくて。どうしても許して欲しくて。ここに来た」
華夜子の頬から手を離し、陸は彼女に笑って見せた。
「自分から『もういい』だなんて、約束をなくしたくせに。もしかしたら…彼女の気が変わったりして、来てくれたりしないだろうかって、藁にも縋る思いでここに来た。気紛れでも、怒りからでも、とにかくなんでもいいから…その、俺に逢いに来てくれないかなって。そしたら、真っ先に謝って、出来る事なら許して欲しくて。それから-」
-イルミネーションを一緒に見たいなって。
輝く木々を見上げ、陸は呟いた。
華夜子もまた、そんな彼に倣うように、街路樹を見渡す。
ふたりの吐く白い息が、空に放たれ、やがてひとつに混じり合う。
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