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第57章 クリスマス・イヴ

「ここに来る途中に声掛けられて。ああ、困ったなって思ったけど『ひとと待ち合わせしてる』って断ったら、その時はすぐに分かってくれたの。その場で『じゃあ仕方ないねって』ひとりで歩いて行ってくれたし」
何を喋り出すのだろう－身構えていたら、さっきの彼の話が始まり。
自分の機嫌を、少しでも良くしようとして－そう思うと、胸が痛んだ。
やはり言い過ぎだったと、猛省する一方。
一番気になるのは。
一番気になってしまうのは－。
「…待ち合わせって、誰と？」
何を訊いているんだ－思ったが、訊かずになんていられなかった。
答えてくれるかは定かじゃないけど。
わざわざこの場所で待ち合わせるなんて、どんな相手？
自分に逢いに来てくれたのではないの？
糠喜びになるから、はっきりするまでは喜んではいけない－自分を抑えていたつもりだが、心の奥底では秘かにもう嬉しがっていた。