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蕩けるようなキスをして
第56章 誰でもない
自分は、そんなつもりなど毛頭ないけれど。
彼女の中では、もう終わったものとなっていない?
この間のカフェテリアでの一件で。
彼女の中では、もう自分とは終わっていない?
『華夜』-名前を読んだら、返事をしてくれる?
笑ってくれる?
その隣りの誰かが、友達以外でなかったりはしない?
少し前を歩くふたりと、どうしても距離を縮められないまま、陸は背後をつき従うように歩く。
決してそんなつもりはないけれど。
結果的になんだか尾行しているかのようで、気分は良くない。
まるで様子をこっそり、盗み見しているようで、後ろめたい気持ちになる。
会話の中身は-この距離では、聞こえない。
せめてもう少し、近付けば-思ったけれど、完璧にストーカーのようでもあり、流石にそれは自重する。
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