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蕩けるようなキスをして
第53章 留以
「華夜子、その日は行けなくなったって、櫻葉君に言ったの?」
「…その日はちょっとって、言ってたよ」
「行けなくなった。行けないって。本当にはっきり、華夜子はそう言ってた?」
留以は陸を真っ直ぐに見据え、強い口調で繰り返した。
「それは…」
そう言われると、その辺は曖昧になってくる。
なんとか思い返してみれば-はっきりとは、言われてない?
確かに途中までは何度も言い掛け-でも、その後が続かなくて。
そんな彼女に、苛立ち。
痺れを切らし。
最後は自分から『もういい』と言い捨てたような気がする-って言うか、そうした。
その事実に、陸は思い当たる。
何かを思い出したらしい様子の陸に、留以は微かに口角を上げ、諭すように話した。
「華夜子、図書館で私が来るのを待ってるから。もう一度、本人に訊いてみれば?」
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