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第52章 行けない

泣いてる。
こんなに、泣いてる。
自分が泣かせた。
自分がこんなにも、泣かせてる。
深い、深い、自責の念が、陸を襲う。
気が強いように見せかけて。
実はこんなにも脆く、崩れやすい。
そんな彼女を、滅茶苦茶にして。
なのに。
滅茶苦茶にした自分なのに。
それでも尚、縋ってくるかのような、彼女の眼差し－…。
こんな、自分なのに。
こんな、最低な男なのに。
それでもいいと言うのなら。
それならば－しかし、伸ばし掛けた手は、彼女には触れなかった。