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蕩けるようなキスをして
第50章 吹雪
広く、開放感溢れる、その空間。
早朝の時間帯の今は、僅かな学生達が離れて座っているだけで、がらんとして淋しかった。
窓際の明るい席に彼女を座らせ、次いで陸は自分も腰を下ろす。
薄暗い空から舞い降りる雪は-次々に地上を、白銀の世界へと変えつつあった。
窓の外の桜の木々は-真っ白な雪の花を咲かせてる。
テーブルを挟んだ真向いにいる華夜子に、陸は笑ってみせる。
「ひとりになりたくて早く大学に来たのに、俺に会っちゃって予定が狂った?」
華夜子の顔が固まる。
「…そんなの。そんな意地悪言わないで」
「…」
「陸と一緒で、嫌な訳ない」
「なら、いいけど」
陸は持参した鞄の中から、テキストや筆記用具を取り出しながら、呟く。
-本当なら。
心の声は、出せなかった。
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