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蕩けるようなキスをして
第49章 予感
まさかホテルがどうとかの下りを言えるはずもなく-華夜子は火照る頬を隠しながら、弁当箱を突(つつ)き始める。
「したとかしないとか、なんなんだよ…マジ、訳分かんねー」
「…さ、さあっ」
ちょっと深く考えられたら、あっさり見破られるので。
華夜子は素知らぬ振りを決め込み、もうこの話題は終わりとばかりに、次々に箸を進める。
そんな彼女の姿にも首を傾げるものがあったが、陸の目は自然、華夜子の昼食に向けられる。
「…食べる?」
陸の視線に気付いた華夜子は、そっと、語り掛ける。
それを受け、陸は少しだけ、口角を上げる。
『食べる』とも『食べない』とも言えない。
だってそれは、彼女のお昼で-自分が貰ってしまうと、少なからず減ってしまうから、申し訳なくって。
でも、もしも、そんな杞憂がなかったのなら-可能ならひとつ、欲しくって。
どっちの気持ちも本当で。
だから、言えなかった。
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