この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
どうか、私を愛してください。
第25章 誠二の想い人
私がしてあげれることって何だろう…?
遥人から学んだことは何だろう…?
介護の仕方ならわかってる、わかっているけど、そんなこと誠二は望んでなんかいない。
私は遥人に生きてほしいって伝えたかった。
たとえ遥人がそれでも呼吸器は嫌だという返事がきたとしても
自分の気持ちを伝えたかった。
遥人が生きているだけで私は幸せなんだってこと
もっと、もっと、伝えていたら
遥人の考えは変わったかもしれない。
「誠二…?寝たの?」
あれから誠二と何度も話し合ったけど
施設に行くと言ってきかない。
だからせめて施設に行くまでは私が家で面倒を見るといった。
無理矢理でも何とか説得したい。
誠二も、誠二が思っている人や子供にも
私のような後悔はさせたくない。
日本へ―ー会わせてあげたい。
“パサッ……”
誠二の膝からスケッチブックが落ちた。
年季がはいっているスケッチブック。
そういえば私は一度も中身を見たことがない。
「誠二ッ……」
落ちた時に開いたページを見ると
そこには何度も何度も消して書いたあとがあって
それでもまっすぐ線が引けなくて
ぐちゃぐちゃだけど――
笑顔の女性がそこにいた。
「み…お…さん?」
文字を習いたての子供が書いたような文字だけど
女性の隣に「みお」と書かれている。
パラパラとめくると女性の色んな表情が描かれていた。
泣いている姿、考えている姿、笑っている姿、寝ている姿……
もう10年会っていないはずなのに
こんなにもハッキリと写真もナシに描けるものなのだろうか。
「これ……」
美緒さんだけでなく、顔はないけど小さい男の子も描かれているページもあった。
顔はなくてもわかる、きっと誠二と美緒さんの子供だ。
まるで写真のアルバムを見ているみたいに
スケッチブックを遡れば
最初は美緒さんが妊娠していて、
子供を抱っこしている絵、ご飯を食べさせている絵、よちよち歩きの子供と歩いている絵など
子供の成長記録の絵もスケッチブックにはたくさん描かれていて
誠二の2人への愛の大きさが伝わって涙止まらなかった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


