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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

時代の流れに翻弄され、殺された秀俊。その辛さを思えば、彼が最期に残した『ふじ』を思い出し手のひらが熱くなる。
「しかし……本当に不安なのは、秀次様です」
「秀次様、って……関白様、ですか?」
「ええ。秀次様も秀俊様と同じ、豊臣の養子です。実子である拾様がお生まれになった事で、一番立場が悪くなっているのはあのお方のはず。なにせもう関白の位を得ているのです、簡単に養子縁組を切る訳にもいかない」
「今のままでは、後継者問題が起きてしまいますね」
今まで実績を重ねてきた養子と、実力は分からない幼子の実子。秀俊を捨ててまで実子の後継ぎを守りたい太閤にとって、秀次は目の上のたんこぶであった。
「伏見に向かえば、いずれ秀次様と顔を合わせる機会もあるやもしれません。その時は、くれぐれもお気をつけて」
気をつけるのは、おそらく正体を悟られないように振る舞う事だけではない。武家に広がる闇に、あきは汗が引き体も冷えていた。
「秀次様と秀俊様は、近しい仲だったのでしょうか?」
「同じ北政所様の縁者ですから、他の養子よりは親しかったでしょうね」

