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さくらホテル2012号室
第12章 ほどける

「毎度」
と言って先生は、その店の暖簾をくぐった。
「らっしゃい」
大将はいつも決まってそう答える。
生真面目な先生にしてはずいぶんラフな挨拶だな、と思った。
その気軽さは先生と大将の親密さの表れだし、そのせいで先生とわたしとの関係を勘ぐられることが、最初の頃は気になっていた。
けれどふたりの板前さんはそんなことをおくびにも出さずに丁寧にわたしを遇(ぐう)してくれた。
「大将、今日のお勧めから頼みますよ」
先生はいつもそう言って、この素敵なランチを始めてくれた。

