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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四

本当に何ということもない、指先と指先がかすめ合った、ただそれだけのことなのに、お彩の指先に雷に打たれたかのような衝撃が走った。
それは伊勢次の方も同じだったらしく、あたかも熱いものにでも触れて火傷したかのような勢いで手を引っ込めた。弾みで、橙色の小さな実が音を立てて、落ちた。
その実を拾おうとして立ち上がったお彩は、ふと名前を呼ばれた。
「お彩ちゃん」
いつになく、熱を帯びた伊勢次の口調に、お彩は動きを止めた。ふと見上げたその先に、思いつめたような男の貌があった。
それは伊勢次の方も同じだったらしく、あたかも熱いものにでも触れて火傷したかのような勢いで手を引っ込めた。弾みで、橙色の小さな実が音を立てて、落ちた。
その実を拾おうとして立ち上がったお彩は、ふと名前を呼ばれた。
「お彩ちゃん」
いつになく、熱を帯びた伊勢次の口調に、お彩は動きを止めた。ふと見上げたその先に、思いつめたような男の貌があった。

