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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四

その夜。いつものようにとっぷりと陽が暮れる頃、仕事から戻った伊勢次は庭に出て何かしていたようだった。何をしているのかと思っていたら、庭の枇杷の樹から実をもいできたらしい。
今、枇杷の樹は艶(つや)やかな橙色の実を鈴なりにつけ、実りのときを迎えている。秋から冬にかけて白い花を咲かせるこの樹は、初夏から夏に実を結ぶ。秋の夕陽を集めたようなその実を伊勢次は籠に山盛りにして抱えてきた。
「ほら、これなら、お前も少しは食べられるんじゃねえか。ちゃんと食わなきゃ、いざっていうときに身体がもたねえぞ」
今、枇杷の樹は艶(つや)やかな橙色の実を鈴なりにつけ、実りのときを迎えている。秋から冬にかけて白い花を咲かせるこの樹は、初夏から夏に実を結ぶ。秋の夕陽を集めたようなその実を伊勢次は籠に山盛りにして抱えてきた。
「ほら、これなら、お前も少しは食べられるんじゃねえか。ちゃんと食わなきゃ、いざっていうときに身体がもたねえぞ」

