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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】 其の参

そして、そのこの世のものとも思えぬ美しき眺めのほど近く、紫陽花の緑の茂みの陰にひっそりと隠れるようにして建つ墓石。よほど気をつけていなければ路傍の石と見過ごしてしまうほどに、ちっぽけでささやかな墓だった。
その墓石の下で永眠(ねむ)る人は、あれは一体誰だったのか。幼いお彩は一緒にいた母お絹に訊ねたけれど、とうとう母は最後までその名前を教えてはくれなかった。母がこの世の人ではなくなった今、その応えは永遠に知ることはできない。
だが、あの墓の主(あるじ)がそも誰であったのか、お彩にはあらかたの察しはついていた。あの小さな墓の下で永久(とわ)の眠りにつく人こそがお彩の真の父、吉之助(よしのすけ)に相違ない。
その墓石の下で永眠(ねむ)る人は、あれは一体誰だったのか。幼いお彩は一緒にいた母お絹に訊ねたけれど、とうとう母は最後までその名前を教えてはくれなかった。母がこの世の人ではなくなった今、その応えは永遠に知ることはできない。
だが、あの墓の主(あるじ)がそも誰であったのか、お彩にはあらかたの察しはついていた。あの小さな墓の下で永久(とわ)の眠りにつく人こそがお彩の真の父、吉之助(よしのすけ)に相違ない。

