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第24章 第十話　【宵の花】　　其の弐

　が、お市が清五郎を誘惑したのは、ひとえに良人の陽太の気を引くためであった。けして清五郎に本気で惚れていたわけではなかったのだ。
　その頃には、まさか女房が手代と浮気をしているとも知らず、若旦那となった陽太は新しい生活に次第に眼を向け始めていた。いつまでも昔の女の面影を引きずっているより、これからの日々に生き甲斐を見い出そうと彼なりに努力していたのである。女房となったお市とも夫婦として遅まきながらやり直してみたいと考えていた。ここから悲劇が幕を開けた。