この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第24章 第十話 【宵の花】 其の弐

三十二歳の市兵衛とは同じ小僧仲間として働いていたという昔がある。泰助は同じ丁稚として奉公に上がりながら、その男ぶりで先代の娘を妻として、これほどの大身代を物にした市兵衛をひそかに憎んでいた。実際には先代は市兵衛の聡明さや人柄を認めたから暖簾を譲る気にもなったのだ。
当代の市兵衛は子どもの頃から、弱い者を庇い助け、陰陽なたなく仕事に打ち込んだ。それに引き替え、泰助は自分より立場が上の者には媚びへつらうが、弱い者は徹底的に苛め、自分の失敗でさえ押しつけようとした。先代は丁稚たちのそんな態度もちゃんと見ていたのだ。
当代の市兵衛は子どもの頃から、弱い者を庇い助け、陰陽なたなく仕事に打ち込んだ。それに引き替え、泰助は自分より立場が上の者には媚びへつらうが、弱い者は徹底的に苛め、自分の失敗でさえ押しつけようとした。先代は丁稚たちのそんな態度もちゃんと見ていたのだ。

