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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

墓地を出ると、大池に向かう。この辺りは広大な境内の中でも最も奥まった部分になる。その名のとおり、巨大な池がひっそりと横たわっており、そのほとりに春には見事な花を咲かせる桜の大樹が数本植わっていた。桜の樹が続いた先に、紅葉が何本か植わっていて、秋もたけなわの今は鮮やかな紅に染まっている。
商人らしく時間には几帳面な市兵衛は、既に先に来ているようだった。上背のあるその後ろ姿を見た時、お彩の胸に熱いものが押し寄せた。
―どうして、このひとをこんなにも長い間、見ることもなく過ごすのに耐えられたのだろう?
地面には赤色に染め上げられた葉が一面散り敷いている。お彩が脚を踏み出した時、落ち葉がカサリと小さな音を立てた。
商人らしく時間には几帳面な市兵衛は、既に先に来ているようだった。上背のあるその後ろ姿を見た時、お彩の胸に熱いものが押し寄せた。
―どうして、このひとをこんなにも長い間、見ることもなく過ごすのに耐えられたのだろう?
地面には赤色に染め上げられた葉が一面散り敷いている。お彩が脚を踏み出した時、落ち葉がカサリと小さな音を立てた。

