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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

父がそう言ったのは、確か去年の春のことだった。あの日、お彩は父に惚れた男がいるにはいても、その男とは容易くは添えないのだと打ち明けた。そんなお彩に、伊八がくれたのがこの言葉であった。
父の死によって、自分には、とうとう帰る場所が無くなってしまった。たった一つの居場所さえ失ってしまった。お彩は底なしの闇に突き落とされたような気持ちだった。
これほどに父の存在が自分の中で占める場所が大きかったのだと、今更ながら知らされた想いだった。
急を聞いて柴田慶竹が駆けつけた時、既に伊八は事切れていた。その場にいたのは、茂助とおきわ、それに伊勢次がずっと傍についていてくれた。伊勢次は別段何を言うわけでもなかったけれど、控えめに傍にいて見守ってくれていることは判った。
父の死によって、自分には、とうとう帰る場所が無くなってしまった。たった一つの居場所さえ失ってしまった。お彩は底なしの闇に突き落とされたような気持ちだった。
これほどに父の存在が自分の中で占める場所が大きかったのだと、今更ながら知らされた想いだった。
急を聞いて柴田慶竹が駆けつけた時、既に伊八は事切れていた。その場にいたのは、茂助とおきわ、それに伊勢次がずっと傍についていてくれた。伊勢次は別段何を言うわけでもなかったけれど、控えめに傍にいて見守ってくれていることは判った。

