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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

「子どもは五つになる綸太郎といって、やはり町人町の呉服太物問屋の相良屋の倅だそうだ。伊八っつぁんの治療に入り用な金子は全部、そちらが持つとこれもついさっき、相良屋の番頭が主夫婦の言伝だといって伝えにきたんだ」
「そういえば、相良屋ってえいう店自体は、さほどではないけど、あそこは大店の京屋の親戚筋に当たるって聞いたことがあるよ」
傍らのおきわがふと思い出したように言う。茂助が苛立ったように女房をたしなめた。
「今はそんな世間話は、どうでも良いだろうが」
大店京屋の親戚筋―、こんな場所で京屋の名前を聞くとは皮肉なものだと、お彩は改めて思わずにはおれない。
「そういえば、相良屋ってえいう店自体は、さほどではないけど、あそこは大店の京屋の親戚筋に当たるって聞いたことがあるよ」
傍らのおきわがふと思い出したように言う。茂助が苛立ったように女房をたしなめた。
「今はそんな世間話は、どうでも良いだろうが」
大店京屋の親戚筋―、こんな場所で京屋の名前を聞くとは皮肉なものだと、お彩は改めて思わずにはおれない。

