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第21章 第九話　【夫婦鳥～めおとどり～】　　其の壱

　伊八はその時、古着屋から出てきたばかりで、向こう側から道を横断しようとしていた幼児を見かけた。折しも馬が引いた荷車が物凄い勢いで走ってきており、そのまま捨て置けば、子どもが荷車に轢かれることは明らかであった。伊八はあろうことか、咄嗟に往来に身を躍らせ、子どもを身を挺して庇ったのである。
　当然ながら、伊八は荷車にはじき飛ばされた。伊八が生命掛けで庇った子どもは助かったという。伊八がその大きな体躯で包み込んでやったので、かすり傷一つなかったと、その親が泣きながら語ったそうだ。大怪我を負った伊八はそのままこの甚平店に運び込まれた。