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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

女は器用な手付きで、選んできた着物を伊八の眼の前に掲げて見せた。
「あら、済みません。私ったら、お客様に余計なことを申し上げちまったみたいですね。どうか、お気を悪くなさらないで下さいましね」
女主人は笑顔で言った。どうやら、黙り込んだ伊八を見て、誤解したらしい。伊八は狼狽えた。
「いや、違うんですよ。ちょっと娘のことを考えてたもので、ボウとしてました」
伊八の娘お彩は、表向きは亡くなった女房との間に生まれた子ということになっている。しかし、実は、伊八の実の娘ではない。夜泣き蕎麦屋をしていた女房のお絹が他の男に手込めにされて身籠もった子である。が、伊八はお彩を実子として育ててきた。生まれる前も娘が一人前になった今でも、その想いに何ら変わりはない。
「あら、済みません。私ったら、お客様に余計なことを申し上げちまったみたいですね。どうか、お気を悪くなさらないで下さいましね」
女主人は笑顔で言った。どうやら、黙り込んだ伊八を見て、誤解したらしい。伊八は狼狽えた。
「いや、違うんですよ。ちょっと娘のことを考えてたもので、ボウとしてました」
伊八の娘お彩は、表向きは亡くなった女房との間に生まれた子ということになっている。しかし、実は、伊八の実の娘ではない。夜泣き蕎麦屋をしていた女房のお絹が他の男に手込めにされて身籠もった子である。が、伊八はお彩を実子として育ててきた。生まれる前も娘が一人前になった今でも、その想いに何ら変わりはない。

