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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

伊八は今年、四十二になる。並外れて長身であり、苦み走った端整な容貌は今でも道行く女たちが振り返るほどで、寡黙なところがまた余計に女にもてる。が、肝心の本人はそんなことにはとんと頓着なく、五年前に流行病(はやりやまい)で亡くなった女房のお絹を忘れ得ず独り身でいる。そんな伊八でさえ思わず眼を瞠るほどに、この女主人は妖艶な美しさに溢れていた。
それが少しも嫌味ではなく、むしろ伊八と同様、この女性もまた己れの美しさを少しも意識してはおらぬところがいっそ清々しい。
「お嬢さまはお幾つにおなりで?」
控えめに問われ、伊八は小さな声で応えた。
「十九になりやす。年が明ければ二十歳になるってえいうのに、全っく、良い歳をして嫁にもいかねえで、最近の若え娘は何を考えてるのやら、俺なんざぁ、とんと判りっこありませんや」
それが少しも嫌味ではなく、むしろ伊八と同様、この女性もまた己れの美しさを少しも意識してはおらぬところがいっそ清々しい。
「お嬢さまはお幾つにおなりで?」
控えめに問われ、伊八は小さな声で応えた。
「十九になりやす。年が明ければ二十歳になるってえいうのに、全っく、良い歳をして嫁にもいかねえで、最近の若え娘は何を考えてるのやら、俺なんざぁ、とんと判りっこありませんや」

