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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-

たまに里帰りと称して「花がすみ」にも顔を見せても、お彩を端から使用人と侮り、ろくな挨拶もしない。
「そうですか、それは、おめでとうございます」
それでも、お彩は心から祝いの言葉を述べた。小巻はいけ好かない女だが、父親の喜六郎はお彩を大事にしてくれるし、奉公先の主人としては申し分のない人だ。喜六郎が既に嫁いで三年になる娘が一向に懐妊しないのを、誰よりも気に病んでいたのを知っていたからだ。
喜六郎は相好を崩している。小巻の懐妊がよほど嬉しいのだろう。
「おや、伊勢さん。すっかりお見限りだったけれど、やっと顔を見せておくれかい」
と、やっと伊勢次の存在に気付いたほどの取り乱し様で、お彩と伊勢次はそれまでの気まずさもどこへやら、互いに苦笑して顔を見合わせるしかなかった。
「そうですか、それは、おめでとうございます」
それでも、お彩は心から祝いの言葉を述べた。小巻はいけ好かない女だが、父親の喜六郎はお彩を大事にしてくれるし、奉公先の主人としては申し分のない人だ。喜六郎が既に嫁いで三年になる娘が一向に懐妊しないのを、誰よりも気に病んでいたのを知っていたからだ。
喜六郎は相好を崩している。小巻の懐妊がよほど嬉しいのだろう。
「おや、伊勢さん。すっかりお見限りだったけれど、やっと顔を見せておくれかい」
と、やっと伊勢次の存在に気付いたほどの取り乱し様で、お彩と伊勢次はそれまでの気まずさもどこへやら、互いに苦笑して顔を見合わせるしかなかった。

