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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参

お知歩はその頃から既に、お佐歩を京屋市兵衛の後妻にと考えていたようである。が、肝心の市兵衛には全くその気はない様子で、お知歩にせっつかれた亭主の徳右衛門―お佐歩の父が市兵衛に娘との縁談をほのめかしても、やんわりと断られるのが常であった。
それでもなお、お知歩は大店京屋との縁組みを諦めなかったが、その中にお佐歩も十八になり、このまま婚期を逸しては大変とばかりに、漸く市兵衛との結婚は諦めたようだった。そして、去年、お佐歩は母の命により、半ば強制的に武蔵屋の手代磯五郎と婚約させられた。武蔵屋はお佐歩の兄である長男が継ぐことになるが、お知歩は、末娘のお佐歩と磯五郎が夫婦になった暁には、暖簾分けをして新たな店を持たせるつもりでいる。
それでもなお、お知歩は大店京屋との縁組みを諦めなかったが、その中にお佐歩も十八になり、このまま婚期を逸しては大変とばかりに、漸く市兵衛との結婚は諦めたようだった。そして、去年、お佐歩は母の命により、半ば強制的に武蔵屋の手代磯五郎と婚約させられた。武蔵屋はお佐歩の兄である長男が継ぐことになるが、お知歩は、末娘のお佐歩と磯五郎が夫婦になった暁には、暖簾分けをして新たな店を持たせるつもりでいる。

